その件は結婚してからでもいいでしょうか

「えっとー」
美穂子が言いよどんでいると、「今、一緒に住んでるんだよ」と先生が言ってしまった。

「は?」
その「は?」っていう言い方に、激しい怒りを感じる。
背筋がぞっとした。

「山井さん、誤解しないでください!」
思わず美穂子は叫んだ。

「居候させてもらってるだけですからっ」

先生が「ん?」という顔でこっちを見てくる。
さっき、キスしたよね? みたいな。
両思いじゃないの? みたいな。

ああ、こっちも怖いんですけど。
でも今は切り抜けなくちゃ。

「わたし、家を友達に追い出されて、ここに毎日の家事をする約束でおいてもらってるんです!」
必死に山井さんに説明した。

「それだけ?」
「それだけです」

とうとう先生は、憮然とした表情で腕組みをし始めた。
それでもこれはつきとおさなくちゃいけない。

だってわたし、山井さんに殺される。

「じゃあ、わたしがそのお仕事してもいいってことですよね」

まるで先生に詰め寄るみたいに、一歩前に出る山井さん。

「お仕事?」
「家事、できますよ、わたし」
「いや、まあ」
先生は困ったように眉を下げた。

「わたしもここで24時間、先生のお世話できます」
「24時間?!」
美穂子は素っ頓狂な声をあげた。

それって。

「わたしもここに、住み込ませてください」

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