その件は結婚してからでもいいでしょうか
美穂子はなんだか疲れてしまって、昨日は自分の部屋にこもって作品の続きを描こうと試みた。
けど!
現実世界での続きがないもんだから、続きなんか描けるわけない。
「あーあ、あのままできてればなああ」
つい口に出てしまった。
小島さんが椅子に座ったまま、ゴロゴロと隣に転がってきた。
「美穂ちゃん、これ、どうなってんの?」
小島さんはひそひそと話しかけた。
山井さんは今、先生の部屋にいってしまっていて、席にいない。
「今、山井さんも先生のおうちに押しかけてきてて」
「そうなの?!」
「はあ」
小島さんは憮然とした表情で腕を組む。
「じゃあ、進展なしってことだ」
「えっと」
突然、ぽっと顔が熱くなる。
小島さんはすかさずニヤリとした。
「何、ヤッたの?」
「ヤッてません!」
思わず大きな声を出して、吉田さんが顔をあげる。
「はは、ごめんなさい」
美穂子は小さくペコっと頭をさげると、再び小島さんと額を寄せ合った。
「先生に『好きだ』って言われて」
「まじ?」
美穂子はもじもじし始めた。
自分のこんな話をするのは、恥ずかしいったらない。
「じゃあ、なんも問題ないじゃん。ヤッちゃいなって」
そう言ってから、小島さんははたと気づく。
「でも山井さん、どうしようかね」