その件は結婚してからでもいいでしょうか

「そうなんです。ラフの締め切り、一週間後なんですけど、間に合わないかもって」
美穂子はどんどん自信がなくなってきた。
どう考えても、間に合わない。

「ふむ」
小島さんはアゴに手を当てて考える。

「多分、このアシ仕事あと二日はあるよね」
「ですね」
「仕事終わったら、山井さん連れ出すから」

小島さんは頼もしい口調でそう言った。

「ほんとですか!?」
美穂子の顔がパッと明るくなった。

「うん。一晩連れまわしてあげる。だからその隙にヤッちゃいな」

表現が生々しいけれど……。

「はい! やります!」
美穂子は小さくガッツポーズをつくった。

「おそらくその一回で、締め切りがきちゃうよ」
小島さんがいう。
「あの先生もいい大人だし、それなりに経験もありそうだから、初めてちゃんにはハードル高いけど『イク』ってのがどんなのか、その一晩で勉強できるといいね」

「いく!? どこに!?」
「天国」
小島さんは可愛くウィンクした。

なるほど。
天国。
そんなに気持ちいいの?

ぽかんとしている美穂子の顔を見て、小島さんはお腹を抱えて笑う。

「先生に教えてもらいなって」
そう言った。

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