その件は結婚してからでもいいでしょうか
第7章
その件は結婚してからでもいいでしょうか
二日間の作業の間、山井さんが睨んでくる。
それはもう、すごい眼光で。
すっごい、疑われている。
夜八時頃、最後の原稿をあげると、アシ部屋に先生がきて、頭を下げた。
「今回もありがとうございました」
美穂子は先生の顔を見られない。なんでかっていうと、疼くから。
とにかく、モジモジしちゃう。
なんだ、この感覚。
早く、先生に触りたい。触られたい。
「じゃあ、恒例飲みに行きますか!」
小島さんが声をあげた。
「賛成」
吉田さんが、よいしょっと重い体を椅子から持ち上げた。
「先生もいらっしゃいませんか?」
山井さんが猫なで声で言った。
「ああ、それは……」
先生がちらっとこっちを見る。
ドキッ。
美穂子の胸が脈打つ。
思わず顔が赤くなった。
「美穂ちゃん、もちろんくるよね」
山井さんが、射るような視線を放ってきた。
「あの」
美穂子は俯いた。
飲むとか、そんなことよりも、ずっとずっとしたいことがある。
「美穂ちゃんは、自分の締め切りが近いんだよね」
小島さんが言った。
顔をあげると、小島さんのニコニコ顏が目に入る。
「あっ、そうです! そうそう!」
美穂子は瞬時に反応した。
「先生の協力も必要だって、聞いたけど?」
小島さんが言った。
ナイス! 小島さん!