その件は結婚してからでもいいでしょうか

「じゃあ、おつかれさまでしたー」

バタンとドアが閉まる。
廊下でガヤガヤと話しながら歩いている音が聞こえた。

足音と声がエレベーター前で止まる。
しばらくすると、エレベーターのモーター音が聞こえて、その中に声が消えていく。
扉が閉まって、声がさらに小さく。
そして、モーター音が遠ざかっていった。

しん、と静かな部屋。

美穂子が横を見上げると、先生もこっちを見下ろしていた。

空気に、自分の胸の音が震えて、広がる。
お互い何も言わないけれど、何をしたいか、されたいかが伝わる。

突然、腕を掴まれ、引き寄せられた。

キス。
すごく強引なキス。
そして、これから何がおこるのか、わかるキス。

先生は美穂子を抱きかかえると、大股で歩き出した。
足でドアを蹴って開け、寝室のベッドに美穂子を勢いよく下ろすと、シャツの頭から脱いで捨てる。
先生がベッドの上に膝をつくと、マットレスがふわっと沈んだ。

胸がばくばくしている。
先生が上から覆いかぶさると、先生の匂いに包まれるみたいだ。
キスをして、なんどもして、でもまだまだ足りなくて。

息が上がる。
もうわけがわからない。

ふと目を開けて、天井を見上げた。

このままだと、終わった後に何にも覚えてないかも。
だって、今、頭の中真っ白……。

「せっ、先生っ!」
美穂子は声を上げた。

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