その件は結婚してからでもいいでしょうか
先生は美穂子の顔を覗き込み、「なに?」といった。
その甘い声だけで、もうおかしくなりそう。
美穂子は頭を勢いよく振った。
気持ちで流れちゃだめ!
これで漫画を描かなくちゃいけないんだからっ!
「メモ。メモさせてくださいっ」
美穂子は必死にいった。
「……なんで?」
困惑で、先生の眉が寄る。
「この一回で、エッチたるものを、モノにします」
「……ははあ」
先生はなるほどという声を出した。
美穂子のいわんとすることがわかったようだ。
先生が体を起こすと、美穂子はとっさに目を覆った。
大人の男の裸は、まだまだ美穂子には刺激が強い。
美穂子は目隠しをしたままベッドから飛び降りると、自分の部屋に走る。スケッチブックと鉛筆を持って、寝室に駆け戻った。
「お待たせしました! じゃあ、続きお願いしますっ」
スケッチブックを胸に抱き、準備万端だ。
「続きっていわれても」
先生は上半身裸で、当惑している。「えっと、次って、どう?」
先生は自分の両手を見て、首をひねった。
「づづきって言われると、どうしたらいいかわかんないなあ」
「困ります!」
美穂子はぴょんとベッドに飛び乗った。「これからが重要なんですから」
「わかるけど……」
先生は困ったように美穂子を見た。