その件は結婚してからでもいいでしょうか

「いいよ、すれば」
先生はそう言いながらも、あの指でゆっくりと美穂子の背中をなぞる。

体の中心から、こみ上げる何か。

「んっ」
思わず声が出て、美穂子はとっさに口を押さえた。

「あれ? どうしたの? 描かないの?」
先生は最高に意地悪だ。

「女性にとっては」
先生が耳の後ろにささやきかける。熱い息と振動。

「どうやってその行為に至るのかが、大事なんだと思うんだよね」

んーっ。

美穂子は手に持っていた鉛筆を取り落としそうになる。

先生はもう、美穂子に描かせようとは少しも思っていないらしい。触れるか触れないかぐらいの、ギリギリのライン。長い指がかすめるその肌に、ぞわぞわと不思議な感覚が広がる。

「まだ行為は先だよ。触られると、どんな風に身をよじるのか、どんな風な声を出すのか、覚えておかなくちゃ、いい作品はかけないよね」

先生は首の後ろに強くキスをする。
指の柔らかな感触と、唇の強い刺激。

「せ、せんせ……い。これじゃ、描けな……い」
「なにいってんだよ。描くんだろ?」

先生は完全に楽しんでいる。
すごくすごく、Sだ。

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