その件は結婚してからでもいいでしょうか
山井さんがベッドに突進しようとするのを、小島さんが必死に羽交い締めにしている。
「山井さんっ。もう手遅れだって! 今回はちょっと譲りましょうよ」
「やだーっ」
山井さんが暴れる。
「いやいや、もう、やっちゃってますって。ほら、二人ともさああ」
小島さんが美穂子を見る。「ヤッたでしょ?」
「まだ、です」
美穂子は自分のシャツを握りしめながら答えた。
「なに、ちんたらしてんだっ! さっさと、入れとけっ!」
小島さんはわめいた。
どうやら、二人とも、酔っ払ってるらしい。
「待ってください。二人とも落ち着いて」
やっと頭が働き出した先生が、ベッドから降りた。いつのまにかシャツを羽織ってる。
先生はもみ合っている二人に近づくと、頭を下げた。
「山井さん、ごめんなさい。俺が、美穂ちゃんのこと、好きなんです」
山井さんの動きが止まる。目を大きく開き、口をポカンと開いた。
「美穂ちゃんの漫画のためっていうのは建前で、俺が美穂ちゃんを抱きたいんです」
山井さんは振り上げていた腕を下ろした。
「……わたしの方が、うまいですよ」
「ですよね」
「好きなようにしていいんですよ」
「そう言っていただけると嬉しいんですが、でも……」
先生は再度頭を下げる。
「彼女が好きなんです。彼女を抱きたいんです。本当にすみません」