その件は結婚してからでもいいでしょうか
山井さんがうつむいた。
動かない。
美穂子の心臓が、ドキドキしている。
『愛してもいいかな?』って言われた。
なんだろ……。
胸がジンジンする。
「わかりました」
山井さんはメガネを持ち上げて、目をゴシゴシこする。それからすくっと立ち上がった。
「美穂ちゃん」
「はいっ」
突然呼ばれて、美穂子は下着姿のまま、とっさに背筋を伸ばした。
「『与田桜助』さんのプライベートは、あなたに任せるわ」
「はっ、はいっ」
「でもっ」
山井さんは、いつものピリッとした感じの、山井さんの顔で笑顔を見せた。
「『桜よりこ先生』は、わたしがお世話しますから」
「宜しくお願いします」
先生は笑って頭を下げた。
「じゃあ、お騒がせしました。続きをどうぞ」
山井さんはくるっと背を向けると、部屋を出て行く。続いて小島さんと吉田さんも部屋をぞろぞろと出て行った。
「うわーん」
ドア越しに、山井さんの泣き声が聞こえる。
「山井さん、立派!」「飲も飲も! 今夜は付き合いますよっ」という声も聞こえてきた。
遠くで、パタンとドアの閉まる音。
そして静寂。
「ふう」
先生はどしんとベッドに腰を下ろした。