その件は結婚してからでもいいでしょうか
「『イク』のを経験できるって言うから、期待してたのにっ」
美穂子はボスンッとマットレスを叩いた。
「それはまた、初めてでハードルの高いことを……」
先生が美穂子の髪をかき分け、首の後ろにキスをする。
美穂子はくるっと振り向いた。
「先生は女の子を『イカせられない』んですね」
「……ほほー」
先生は楽しそうに笑う。
「下手なんだ。漫画の参考にならないんだ……」
美穂子はがっかりして、先生の胸におでこをくっつけた。
ぐりぐりとおでこを擦り寄せる。
「漫画、どうやって描いたらいいんだろー。イカないのに『イッた』って描けないよー」
美穂子は先生の背中に手を回した。
先生の汗ばんだ肌をさわる。
汚いなんて、ちっとも思わない。
「じゃあ、二回目する?」
先生は手を伸ばして、枕の下からアイテムを取りだした。
「あと、二個あるよ」
「むむむむむむむむりー」
美穂子は勢い良く首をふった。
今日中に二度目なんて、とんでもない!
裂けて、失血死だ。
先生は笑いながら、美穂子の耳に暖かな唇をつける。
ついさっきまで、身体中に先生の唇の感触を感じていたので、その接触にボワッと頬が火照る。
「でも、知りたいんでしょ? 『イク』ってどんな感じか」
吐息のような低い、かすかな先生の声。
そのかすれた声が、さっき先生の最後の声と重なって。
痛くてしかたなかったのに、またじわじわしてきてしまう。