その件は結婚してからでもいいでしょうか
エンディング
「先生っ! 締め切りです! もう待てませんよーっ」
新人の編集さんがドアをドンドン叩く。
「無理よ、こうなっちゃね」
ソファで足を組見直しながら、八代さんは深いため息をついた。
「あと一時間はでてこないわね」
「マジですか!」
新人は真っ青になる。
「だから、寝室に二人で入って鍵をかける前に、取り押さえなくちゃいけないのよ」
八代さんは笑った。
「いいっすよねー、八代さんは。桜先生、締め切り遅れないですもん」
新人は肩を落とした。
「それに比べて、ミホ先生はいつもギリギリです」
「でもこの時間があるから、ミホ先生の作品があがってくるんだもん。ここはちょっと辛抱してごらん。いいの、出してくるから」
八代さんはそう言うと、おかしそうに笑った。
「しかし、人間変われば変わるものねー」
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広い寝室。
ベッドは特大。
「美穂子、これいい?」
「……わ、わかんない」
ネタに困ると、先生はすぐに協力してくれる。
「わかんないって、じゃあやめる?」
「いやだ、意地悪」
「言わなきゃわかんないだろ?」
旦那様は、ベッドの中だとすごくS。
でもそれがすごくいいし、たまんない。
だって、ベッドの中だとSになる彼氏の話は、連載が決まったもん。
「……やめないで」
「欲しい?」
「欲しい、です」
先生は、美穂子を見下ろす。
全身をくまなく視線で犯されると、もうそれだけで……。
「いいよ、あげる」
そう言って、ニヤリと笑った。
「俺のでイッて、奥さん」
《完》