その件は結婚してからでもいいでしょうか
「先生、ご飯何食べたいですか?」
先生の顔がぱあっと輝く。
「卵焼きっ」
「甘いのと、お出汁がきいてるのと、どっちがいいですか?」
「甘いの」
「了解です」
美穂子は再び掃除機をかけ始める。先生は机に向かった。
ネームはごくごく簡単な漫画の設計図のようなもの。コマ割りやセリフなど、鉛筆でラフに入れていく。
そういえば。
美穂子は先生の手元をじっと見つめた。
そういえばまだ、先生が真剣に描いてるところ、見てない。
「ん? 何?」
鉛筆を片手に顔を上げる。
「いいえ、別に」
美穂子は首を振った。
どんな風に書いてるんだろう。
気になる。
すごく気になる。
「ここ何もないので、買い物に行ってきますね」
美穂子はそう言った。