その件は結婚してからでもいいでしょうか

「ぶははははは」
先生が爆笑。

笑いながら、卵焼きをつまんで口に入れる。
それからまたこらえきれず笑う。

「ひど!」
美穂子は眉を吊り上げた。

「だって、結婚するつもりなんだあ、って思って」
「しますよ! 王子様が来たら!」
「王子がエロいのは、許すってこと?」

意地悪な言い方。

「くっ、くそー」
美穂子はテーブルにツップした。

「あー、面白かった。久しぶりに楽しく食事した」
先生が手をあわせる。

「ごちそうさまでした」

先生は笑いながらデスクに戻る。
それから滅多打ちにされた美穂子を、肘をついて見下ろした。

「そっかあ。なるほどね。だから美穂ちゃんの作品は、リアルじゃないんだ」

「え?」
美穂子は顔を上げる。

先生はにっこり笑うと「ご飯、うまかったよ」と言って、あっという間に仕事に戻っていった。

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