その件は結婚してからでもいいでしょうか
いつもは隠れているおでこが全開。切れ長の目もトロンとしている。
あれ、こんな顔だっけ。
美穂子はなんだか落ち着かなくなった。
「隣に行ってきます」
美穂子は早く逃げたくて、慌てて立ち上がろうとした。
「待って」
ガシッと手首を掴まれる。
ボワーッと、血が瞬間的に沸騰した気がした。
「なっ、なん、なにして」
ろれつが回らない。
「待って、待って」
先生がむくりと起き上がる。
信じらんない。なんで裸で寝てる?
先生は美穂子の手首を掴んだまま、目をゴシゴシこすった。
「着て! 先生!」
「……安心してください。履いてます」
「違うよっ。上! シャツかなんか、着てください」
先生がポカンとした顔で美穂子を見る。
「あれ? 上が裸もダメなの? じゃあ、プール行けないじゃん」
「いきませんっ」
先生は「はいはい」と嫌そうにつぶやくと、床に落ちているシャツを拾った。シャツを着るとき、やっと美穂子の腕を離す。
「美穂ちゃん、あのね」
シャツを着ると、ベッドから足を下ろす。
まさか、パンツしか、履いてない。
「立ち上がるな!」
怒りに任せて怒鳴った。
「ああ、そうだね」
先生は布団を腰にぐるぐる巻いて、美穂子に向き直った。
「誰にも言わないでね。俺が男だって」
寝癖だらけの頭で、先生は言った。