その件は結婚してからでもいいでしょうか
大好きな桜先生の職場で働けて、めちゃくちゃ幸せ。
なんてわたしはラッキーなんだろう。
美穂子の足取りは自然と軽くなった。
美穂子のアパートは、職場から徒歩で二十分。交通費を節約するために歩いてる。
美穂子の収入でこんなに良い場所にアパートを借りられるのは、アシスタント友達のめぐちゃんと2DKをシェアしてるから。
めぐちゃんは美穂子ほど少女漫画に熱中しているわけじゃない。夢中なのはコスプレ。コスプレ仲間とすごい格好をして遊びに行く。美穂子にはちょっと理解できない分野だけれど、それでもめぐちゃんが「ナントカ」っていうキャラクターの格好をすると、女性でも顔を赤らめるほどセクシーになるのはわかった。
学芸大学駅から程近い木造二階の古めのアパート。外壁には蔦の残骸が巻きついていて、階段は鉄製だ。
二人で借りてるから、美穂子は六万円でここに住めてる。
カンカンカンと外階段を軽快に駆け上がると、一番奥のドアを開いた。
「ただいま!」
美穂子は上機嫌のまま、挨拶をした。
「おおおお、お、おかえり」
ダイニングの向こう側の襖から、めぐちゃんの声が聞こえた。
あれ、なんか、声がおかしい。
美穂子は首を傾げる。靴を脱ごうとして下を向くと、玄関に見知らぬ大きなブーツ。
「めぐちゃん? 誰か来てるの?」
美穂子は靴を脱いであがると、ダイニングテーブルの上に肩掛けの布バッグを置く。
静かに、めぐちゃんの部屋の襖が開いた。
めぐちゃんは、家の中にもかかわらず、過激なコスプレをしている。
「めぐちゃん、どうしたの? めちゃくちゃ露出が多いよ」
美穂子がそう言ったとたん、突然めぐちゃんが土下座をした。