その件は結婚してからでもいいでしょうか
「じゃ、わたしはこれで」
美穂子は逃げるように頭をさげる。
「今度、わたしの彼と一緒に四人で飲もうよ〜」
小島さんが手をひらひら降った。
「ぜひ」
愛想よくそう言う先生を無言の圧でドアの外に押し出す。
最後に美穂子はもう一度頭を下げ、やっとドアを閉めることができた。
美穂子は大きくため息をつく。
「はあ、まったく」
額をぬぐった。
「彼氏になっちゃった」
先生は笑うように言う。
「ほんと、なんであんなこと言うんですかっ」
二人で歩き出した。
今度は美穂子のアパートの方角へ。
「楽しそうだったから」
「なにそれ」
美穂子は憮然と腕を組んだ。
快晴。
散歩にはちょうどいい気候。
けれど、美穂子だけが、大汗をかいてしまった。
「ありがとう、助かった」
先生が言う。「俺のこと、言わないでくれて」
「まあ、そういう約束ですから」
美穂子は、しぶしぶそう答えた。