その件は結婚してからでもいいでしょうか

アパートに帰るのは、約一週間ぶり。

「すぐ戻ります。先生はそこで待っていてもらえますか?」
美穂子はそういうと、鉄の外階段を上った。

鍵を取り出し、中に入ろうとした瞬間。

バアンッ!

ドアが破裂したみたいに勢いよく開いた。

美穂子は弾かれて、後ろに転がる。

「美穂ちゃんっ!」
先生が叫んだ。

「いた……」
コンクリートの廊下に手のひらと膝を強く打つ。

そこに先生が飛んできた。手を伸ばして美穂子を抱くように立ち上がらせる。

美穂子はなにが起きたのかわからない。とにかく、手のひらと膝が痛い。

「どうしてわかってもらえないんですかっ」
ドアから後ろ向きに、ひょろっとした男が出てきた。

「うるさいっ。帰れ!」
長い黒い足が玄関からにょきっと現れて、その男を思い切り蹴り飛ばした。

ヒョロ男が「うわ」と転がる。

美穂子の足元に男が飛んできた瞬間、先生が美穂子を再びかばうように抱く。

「芥川! やりすぎ!」
めぐちゃんが、Tシャツ一枚で玄関から走り出てきた。

「だって、きもいよ、こいつ」
こちら、パンツ一丁の芥川が言った。

「それでも暴力はダメっ」
めぐちゃんは芥川の腕にしがみつく。おっきな胸が、ムギュッと潰れるのが見えた。

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