その件は結婚してからでもいいでしょうか

「わっかんないなあ」
吉田さんがため息まじりに言った。

「だって、三次元の人をカッコイイとか、思ったことないし。エッチしたいってのもどういう感じかわからない」
吉田さんが言うので、美穂子も思わず「そうですよ!」と声を上げた。

「美穂ちゃんが何言ってんの」
小島さんが目を細める。

「『好き』ってことと、『エッチしたい』ってこと。どう違う?」
吉田さんがクソ真面目に尋ねた。

「『好き』は気持ちで、『エッチしたい』は本能かな?」
小島さんが言う。「男も女も、欲情しちゃえば好きじゃなくてもエッチできる」

「そうなの?!」
吉田さんが素っ頓狂な声をあげた。

「じゃあ」
美穂子は勇気を出して話し出す。
「じゃあ、『触られたい』って思うのは、気持ちと本能、どっちですか?」

山井さんが「美穂ちゃんが言うと、なんかえろいわ」と呟く。

小島さんが腕を組む。
「それは、エッチしたいの前哨戦。すでにちょっと、欲情しちゃってる感じかな」

欲情!

美穂子は耳を覆いたくなった。

わたしが、先生に欲情!
しんじらんない。

「もちろん、好きって気持ちからエッチしたいって方向に行くことも普通だからね」
パニックになってる美穂子を優しくなだめるように、小島さんが言った。

好きからの、欲情。ああでも。

やっぱり、受け入れられないわ。
三次元に触られたいって思っちゃってる、今のわたしなんて。
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