その件は結婚してからでもいいでしょうか

先生が何気なく一つを取る。

「お、いいね、コレ」
先生がにやりと笑った。

「やだ、不潔」
美穂子は二歩ほど先生から距離をとった。

先生が「まったく、このギャップがなあ。悩ましいよ」と呟く。

「ギャップ?」
「お酒を飲んだ時と、シラフの時が違いすぎる」

ん? なにそれ。

「で、見るんでしょ?」
先生がはい、とDVDを差しだした。

美穂子は指先でそっとつまんで受け取る。本当は触るのも嫌だ。

「とてもひとりで見る勇気なんか、ありませんよ」
「俺も一緒に見てやろうか?」
「お・こ・と・わ・り!」

先生が声に出して笑った。

絶対わかって意地悪してるんだ。ひどいっ。

「あ、でも!」
美穂子は思いついた。「この部屋テレビもプレーヤーもないじゃないですか」

逃げ道が見つかった。なんと喜ばしい。

「あるよ」
先生が寝室に手招きする。

寝室はちょっと見ない間に荒れていて、布団はもしゃもしゃ。カーテンも開けてない。

先生がクローゼットを開けると、そこに大きなテレビが現れた。

「どうぞ、ご自由にお使いください」
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