その件は結婚してからでもいいでしょうか
美穂子はがっくりとうなだれた。
「ベッド座っていいから」
「遠慮します」
先生は美穂子の手からDVDをとると、プレーヤーの中に入れた。自動再生が始まる。
「え、今? すぐ見なきゃだめ?」
美穂子は大慌てだ。
「善は急げ」
先生が腰に手を当てる。「漫画の仕事、ほしいよね?」
美穂子はぐっと詰まる。確かに仕事がほしい。
「はい、ヘッドフォン。音漏れ注意ね。聞こえると、俺が変な気持ちになっちゃうから」
「さいってー」
ヘッドフォンを持って、美穂子は叫んだ。
「じゃあ、ごゆっくり」
先生はピラピラと手を振ると、部屋のドアを閉めて出て行く。
美穂子はごくんと唾を飲み込んだ。
見るの?
本当に見るの?
わたし、耐えられるの?
心臓がばくばくしてきた。手に汗をかく。
先生のベッドには座る気になれず、冷たいフローリングに座った。
テレビはすでに話が始まっている。どうやら恋人同士の話らしい。救いは登場人物の二人が終始笑顔だということだけ。
美穂子は意を決して、ヘッドフォンを耳にかけた。