その件は結婚してからでもいいでしょうか

しばらくは普通の恋愛ドラマのよう。恋人が部屋でまったりとしているだけ。

美穂子がほっとしたのも束の間、徐々にお互いを触りだした。

美穂子はあまりのことに口に両手を当てる。

すんごいキス。

目が点になった。

だって、キスって、こんなに生々しいもの?
ちょっと触れて、顔を赤らめて、っていう感じじゃないの?

やだ、気持ち悪い。

美穂子は目をそらしたい気持ちを必死に抑える。

これを漫画に描かなくちゃいけないんだから。
なんとかして会得しなくちゃ、このすんごいキスを。
ああ、でも、無理かも……。

美穂子はげんなりしてきた。

やっぱり二次元がいい。キスは綺麗なままだもの。こんなえろえろじゃないもの。
二次元を見て描くのでも、いいんじゃない?

『人を見るんだ。生きている、呼吸している、人を見る』

先生はそう言ってたけど、ハードル高いよ……。

美穂子が落ち込み始めたとき、とうとう男性が女性を脱がし始めた。

「!?」
美穂子はとっさにベッドの上に逃げる。それから布団を目の下まで引っ張って、恐る恐るテレビに目を向けた。

テレビで繰り広げられる男女の営みと、布団から感じる先生の匂い。美穂子の体がなぜか、かっかっかと火照ってきた。

なにこれ。なにこれ。なにこれーっ!

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