その件は結婚してからでもいいでしょうか
「好きじゃないのに、エッチだけするっていうのは、受け入れられません」
美穂子はぎゅっと手を握る。
「でもエッチしたら好きになったってこともあるよ?」
山井さんが言う。「身体が触れ合うと、なんだか好きになっちゃうの」
「わかるー」
小島さんが相槌を打った。
「そんなことあるんですか?」
「あるある。だからエッチしたら、美穂ちゃんのことが気になりだす可能性も」
そんなことあるんだろうか。
「その漫画家さんとしちゃいなよ。そしたら描けるって」
小島さんが自信ありげに続ける。
「でももし、漫画家さんが抱いてくれなかったら、わたしが『エロメン』を紹介してあげる」
「えろめん? なんですか、それ」
「ビデオ男優のこと。かなりかっこいいよ。仕事でエッチする人だから経験も豊富だし、初めての子には優しくしてくれる」
小島さんが言った。
「小島さん、そんな人と友達?」
山井さんが身を乗り出す。
「そうなの、いい奴だよ」
小島さんは少し自慢げだ。
「なにその、幅広い人脈! すごーっ」
山井さんが、バカうけした。
「まあ、それは最終手段で。とりあえずは漫画家さんに抱いてくれって言ってごらん」
美穂子はごくんと唾を飲み込む。
先生とエッチ。
わたしはしたいんだろうか。
「ごちそうさまー」
吉田さんがパンッと手をあわせる。
「全然話の意味がわかんないから、一心不乱に食べちゃったよー」
吉田さんがニマッと笑った。