その件は結婚してからでもいいでしょうか
「ビデオ見るなら、俺の部屋使っていいよ?」
「それはもう……」
美穂子は小さく首を振った。
「あまりにもナマナマしすぎて、見るに耐え難いんです」
そう言うと、先生が「まあなあ」と理解を示す。
「美穂ちゃんが一番苦手な部分だし」
「ああいうビデオを見ずに、リアルを知るってどうすればいいんだろ」
何気なく口にして、はっと気がつく。
それって、エッチするしかないよね?
先生を見ると、明らかに動揺している。箸を置いて、麦茶をごくごくと飲んだ。
「小島さんが『エロメン』紹介してくれるって言うんです」
この話題を避けなきゃいけないと思いつつも、なかなか方向転換できないもどかしさ。
「なんだその『えろめん』って」
先生が胡散臭そうな顔をする。
「ビデオ男優さんらしいです。お友達なんですって。最初でも優しくしてくれるから、手っ取り早いんじゃないかって」
「ダメ! そんなのっ!」
先生が驚いて叫んだ。
「そんな、好きでもない人としちゃダメだよっ」
「はあ、でも。他に方法が……」
美穂子はその剣幕に少々面食らって、おどおどし始める。
「いや、方法はあるよ? ほら、あれ」
先生の口が回らない。超スピードでいろいろ考えているみたいな顔をした。
「人に聞くとかね」
やっとそう言った。