その件は結婚してからでもいいでしょうか
「だから……」
先生が深いため息。
「そうじゃなくてさ、美穂ちゃんの気持ちがさ」
先生は美穂子を見ようとしない。
「気持ちは決まってます。先生がいいなら、わたしもいいんです」
美穂子は必死に言い張った。先生の視界に入ろうと、膝をついて先生の顔を覗き込む。
「違うだろっ」
先生が声を荒げた。
顔を上げて、美穂子の顔を見る。切れ長の目が、一瞬熱を帯びる。
先生が、美穂子の両腕をぐっと掴んだ。
すごい力。
美穂子は驚きで目を見開く。
「現実の男が嫌なんだろ? 泣くほど嫌なんだろ?」
勢いで美穂子は後ろに倒れこんだ。肩を強く打ち付けて、痛みに顔が歪む。身をよじろうとしたが、両腕を強く床に押し付けられて、びくともできない。
恐怖がこみ上げる。怯えた目で先生を見上げた。
美穂子の顎をガッと掴むと、頬に先生の指が食い込む。
そして唇が触れた。
美穂子は恐怖と高揚で動けない。
漫画で見るようなキスじゃない。強くて、荒々しい。
「口開けろ」
先生はそう言うと、美穂子の中に入ってきた。
なにこれ、すごい、深い……。
美穂子は窒息しそうになった。完全にパニックになって、目の前が歪む。