幸せなありがと。
ゆきくんの手にもママのお弁当がありました。






私たちは、合わせたわけでもなくお昼に食べる予定だった、そのお弁当のふたを開けました。






二段重ねのお弁当箱。






下の段にはいつものりご飯。






上の段には必ずの玉子焼きと






それぞれのおかずたち。






ゆきくんのお弁当も同じでした。






「あーちゃん。ママ本当に死んじゃったのかな。」





ゆきくんが私にそう問いかけてきました。






こんなに大勢の大人が動いているんだ。





嘘なわけがない。





でも信じたくない。






私はゆきくんに首を横に振って見せました。






もう泣いているゆきくんの顔は直視できませんでした。






ぐぐぐっと地鳴りがしたように感じた瞬間






ママは病院から帰ってきました。






黒いフィルムの張られた大きな乗用車に緑色のナンバー。





普段見ることのない、車。






担架に乗せられふわっと白く包まれたママ。






そっとそっと丁寧に運ばれてくるママ。







それまで止めていた涙は






いつの間にか止まらなくなっていました。






ママ…





あの時はものすごく寂しかったんだよ。







もちろん今でも寂しいけど。






ママ…






会いたいよ。
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