俺の生きる意味を探して
「あ、あぁ……。」
斎藤さんが僅かにだが躊躇した。
きっと、この人が可哀想に見えるほど、俺が狂気じみているのだろう。
その証拠に、いつまで経っても湯浅喜右衛門の震えが止まらない。
「ガタガタうるさいなぁ……。ちょっとは大人しくできないの?」
まだ、止まらない。
「……手元が狂って、ますます痛い思いをするのは嫌だろ?」
ピタッと震えが止まった。
あーぁ、涙と鼻水で顔面ぐちゃぐちゃだ。
今からもっと酷くなるのに。
こんな汚い顔を見ながら尋問かぁ……。
「……ん?おっと、ちょうどいい所に水があるねぇ。」
これなら、この汚い顔もちょっとは綺麗になるかな?
「斎藤さん、少し離れてください。」
「あぁ……」
バシャッ
夏だからね。
涼しくなって快適でしょ?
「じゃ、尋問を始めようか。」
尋問は始まり、屯所中には男の叫び声が響きわたった。

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