君のカメラ、あたしの指先
 有紗は何をどうしたのか、事実上廃部になっているという部屋を借りて放課後のあたしの居場所を作ってくれた。

「国語の先生脅してきた」

 と言った有紗に、密かに戦慄したのを覚えている。

 あたしの学校は基本的に、部活は強制参加制度だ。
 
 他に習い事をしていたり、午後用事があってどうしても部活動に所属できない生徒は基本的に「ボランティア部」なるものに参加させられていて、月一回、みんなよりちょっと早く来て朝に校内や周りの清掃活動を行うという妙な風習がある。

 確かに、あまり出席できない部活に幽霊部員として所属するよりは双方にとってやりやすい制度だ。
 
 真面目くんが食ってかかる必要も無いし、都合がつかない方も肩身の狭い思いをしなくていい。

 だけど、掃除がたいして好きじゃないのはどこの高校生も似たようなもの。
 
 そこでボランティア部に所属している、許可をもらった数人を適当に集めて作られた文芸部が……あたしがさっきまでいた部屋、国語準備室になる。

 実質活動人数は、あたしだけ。
 孤独だけど、すごく気楽。
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