君のカメラ、あたしの指先
 これはビックニュースだ。あたしがずっと謎に思ってきた瀧川の好きの矢印は、やっぱり有紗の方に向いていた。
 
 小躍りしたい気分を抑えながら、続きを促す。まだ疑問は全く解決していない。

「あいつがあんまりにもうじうじしてるもんだから、『そんなんだったら俺が取っちゃうよ?』って言ったんだ。そしたら優馬のやつ……本気にしやがって」

 え、なになに。
 美味しい王道ネタじゃないですか。

 大抵の場合はそこでスイッチが入って「渡さねえ!!」って頑張るとこなんだけど……『しやがって』って、何か問題でも?

「奮起して奪いに行くルートじゃなくて、諦めて俺に譲るルートを取ろうとしてるんだよ」

「なんだって?!」

 あたしは思わず机に左手を叩きつけた。

「……手、痛かったんじゃない?」

「痛かった」

 痛かったけどそんなことは今どうでもいい。
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