君のカメラ、あたしの指先
「それはあかん。ものすごくあかんパターン」

「でしょ。あいつ、根が優しすぎるから。あとああ見えて自分に全然自信ないから、結城と俺が両想いなんだくらいに思ってる」

 山田は左手で顔をおおって、深い深いため息をついた。

「瀧川くんってもしかして、意外とヘタレ……?」

「意外とというか、かなりかな」

 これは有紗を任せてもいいのか心配になってきたぞ。

「付き合い始めちゃえば、全力で大切にすることは保証するんだけど。結城に近づく権利がない、くらいに今は思ってるから」

 あちゃあ。
 そりゃ重症だね。

 もう一枚のルーズリーフに瀧川優馬のキャラシートを作った方がいい気がしてきた。

 とりあえず手元の紙に関係図をざっと書いておく。それを眺めながら、さらなる疑問をあたしは口にした。

「でも別にそれだけなら、声かけるのあたしじゃなくてもいいよね」

 そう。引っかかるのはそこなのだ。
 何度も言うけど、あたしはついさっきまで彼の下の名前さえ知らなかった。それくらいの浅い付き合いなのに、どうしてあたしに白羽の矢がたったのか……。
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