君のカメラ、あたしの指先
 初めて付き合う人が『あたしの好きな人』じゃないというのは、正直いってかなりの不安要素であるわけで。
 
 そもそも物語の中だけの恋愛話しか知らない私に、そのへんのハードルを飛び越えさせてくれる何かがあるなら考えてもいいかな。

 そう、思ったのだ。

 
 いつものあたしなら、間違いなく突っぱねている。
 だけどなんでか、この人なら乗っかってあげてもいいかなと思ってしまった自分がいた。

 印刷室で調子を狂わされたというのは、おそらく大きい。
 
 だけどそれ以上に――この人のことを知りたいと、思ってしまったのだ。
 
 純粋な興味。

 山田朝飛という人間がどんな人物なのか……知りたい。
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