君のカメラ、あたしの指先
 あたしの心はぐらぐらだ。頷いてしまえ、と脳内の悪魔が囁く。
 メリットは確認できた。有紗のために出来ることならなんでもしたい、その気持ちに嘘もない。
 でも。

「それで……山田くんのメリットは、ちゃんとあるの?」


 尋ねた声は、自分で思ったよりも弱々しかった。

「え?」

「……え?」

「最終確認、そこ?」

「……それ以外に何か?」

 だって普通に考えて、そこは確認しなきゃいけない重要事項じゃない?

 流石にあたしも、お世話になりっぱなしでは気が済まない。だからといってなにかしてあげる予定はさらさらないけど……まあ、肩もみレベルならしてあげなくはないかな。うん。

 そんなあたしの内心を知ってか知らずか、山田はくすりと笑って言った。

「そうだなあ……何もしなくてもいいんだけどな。十分メリットはあるし」

「なに? あ、分かった女よけとか」

「そんな失礼な事に使う訳ないでしょ?!」


 なんでかかなり怒られた。


「っていっても吉野さん、納得しないよね」

「しないね」

「それじゃあね、俺を吉野さんの小説の、一番はじめの読者にして? 俺、吉野さんの書く小説好きだから」
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