君のカメラ、あたしの指先
「……へ?」

 間抜けな声が出た。
 今、間違いなく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていると思う。

「もう一回言う? 俺は、吉野さんの書く小説が――」

「いいいいいいいいいいいよ!! 言わなくていいよ!!!」


 なんで。
 どうしてこの人は。

 そんな真顔で、あたしを動揺させる言葉を言えるの?

「俺、本がけっこう好きなんだ。設定とかキャラクタープロフィールとかあるとちゃんと隅まで読むタイプ。男だけど割と少女漫画とか恋愛小説とかも好きでよく読むし」

 さっきからの違和感の正体の一つはそれか。
 道理であたしとの会話がスムーズだったわけだ。「キャラシート」って言葉が出てきた時点でびっくりはしてたんだけど。

「ていうか、それを確認したってことは了承してくれたってことでいいんだよね」

「えっ」

 慌てて首を横に振るも、山田は全く聞いちゃいなかった。

 そういうことになっちゃうの?
 いやでも、いいなんて言ってないし。

「よろしくね、吉野さん。悪いようにはしないから」

 満面の笑みを浮かべた彼の前に、あたしはがっくりとうなだれることしかできなかった。

 こんな始まり、絶対後悔するに決まってる。
 そんなことは、分かっていたのに――
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