君のカメラ、あたしの指先
「とにかく――席につきなよ。詳しいことは昼休み。ね?」

 ふてくされた有紗を席に追いやって、あたしはふう、と安堵のため息をついた。

 昨日、言い訳考えておいてよかった。
 絶対根掘り葉掘り聞かれるよ、と頭を抱えたあたしに、山田は事実を脚色すればいいのだと提案したのだった。

『本当の話を数パーセント混ぜると嘘はそれっぽくなるらしいからね。新作小説の骨組みを考えると思って、やってみ?』

 つくづく人を乗せるのが上手いやつだ。油断ならない、敵に一番回したくないタイプの人。
 一応今は彼氏、ですけどね。
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