サトウ多めはあまあまデス
「なんだよ。心愛は初恋の人がいいんだろ?」

 急にルーくんが大きな声を出した。

 え…。何を急に…。

 確かに今でもたまに思い出すくらいに気にはなっていると思う。
 でも今は…。

「その初恋の人って俺だぜ。」

「え…。うそ…。」

 またルーくんの適当な文言だと思いたいのに、見つめられた目は真剣だった。

「女の子みたいな可愛い格好した子が「俺が心愛を守る」ってほっぺにチューした。
 あの子は女の子だったのかな?男の子だったのかな?って言ってただろ?
 あれ。俺だから。」

 何を…。急にどうして…。

「だって、今まで何度もその話して「誰か知らない?」って聞いても知らないって言ってたじゃない。」

 なのに今さらどうして。

「そりゃ女みたいと思われたのに「それ俺」なんて言えるかよ。」

 うそ…。本当に…?

「俺ら家族と心愛のとこと一緒に旅行に行った時のだろ?
 俺、母さんに女のドレス着せられたからよく覚えてる。心愛が泣いてて…。」

 そう。お母さんのことを思い出して泣いていた私。そこへひょっこり現れた可愛いドレスの女の子。

 なのに「心愛は俺が守ってやる」って言われてほっぺにチューされた。

 だから男の子なのか女の子なのか分からない不思議な思い出。

「じゃ。私からチューしたのもルーくん?」

「それは…。そんなことより俺が初恋の相手なんだぞ。
 初恋の相手が分かったら結婚する!とか言ってただろ?」

 私の初恋の相手。結婚するって決めたって小さい頃に言ってたみたい。

 でも…。それは小さい頃にそう思っただけで。

「ほらほら。もうその辺で。瑠羽斗。しつこい男は嫌われるわよ。」

 桜さんが珍しく助け舟を出してくれて、この話はおしまいになった。
< 100 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop