サトウ多めはあまあまデス
 大智は顔色が悪かった心愛が心配になり、佳喜にそのことを伝える。

「ココちゃん。大丈夫って言ってたけど、真っ青な顔して出てったぜ。」

「真っ青って…。」

「お前の書いたメモ書きを欲しそうにしてたから、あげたんだ…。」

 最後まで言い終わる前にそれがまずかったことを大智は知った。

 佳喜は最近見せなかった鋭い目つきになると「悪い。オーナーにやっぱり今日は無理だって伝えて」と店を出て行ってしまった。

「あれを…あれを見たのか。どうすれば…。」

 佳喜は、はやる気持ちを抑えながら家へと急いだ。

 家に帰っても心愛の靴はない。念のため部屋もノックしてみる。
 それでも返事はなかった。

 いけないと思いつつ心愛の部屋のドアを開けた。女の子らしい可愛らしいインテリア。
 部屋から心愛の甘い香りがして佳喜の胸を締め付けた。

 ふとテーブルにある書類に気づく。2通ある書類。戸籍だった。

「あいつ…。それで…。」

 そういえば就職用の書類を取りに行くと言っていた。
 今思えばその後から様子がおかしかった気もする。気づいてしまったのだろう。

 その上、あの字のことまで…。

 佳喜はよろよろと部屋を出ると外へと歩き出した。あてもなく。歩く。
 自分には行く宛などない。自分の居場所なんてどこにもないのだ。

 そんなことを思いながら。
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