サトウ多めはあまあまデス
 驚いて何も言えない。

 殺したって…何を。これ以上に何があるっていうの?

「やっぱりそう思ってたか。」

 パパが場に似合わない呆れた声を出した。

「俺があんなことをしなければ…。俺が…側に居て欲しいって望むと…居なくなってしまうんだ。」

 どういうことだろう…。

 そう思っているとケイちゃんの悲痛な、かすれて途切れ途切れの声が届く。

「俺は施設を抜け出したんだ。別にたいした理由もない。ただの暇つぶしで。
 なのに愛子さんは俺を探し回った。雨の中、体が弱いのに。それで…。」

「それは!!…殺したって言わないよ!」

「俺がそんなことしなければ、愛子さんは…。」

「そ、そんなの…。私だって。ママは体が弱いのに私を産んだから…。」

 今まで誰にも言ったことはなかった。ずっと胸の奥にしまっておいた気持ち。
 ママが死んじゃったのって…。

「おいおい。それを言い出したら俺みたいなのがフラフラしてたから愛子は心配で心身衰弱したってことになるぞ。」

 パパが…。確かに。そう思った空気を察してパパは笑い出した。

「そこは、違うよ!パパのせいじゃないよ!って言ってくれないのか?」

 だって一番の原因かもって素直に思っちゃったんだもん。とは言わないでおいた。

「…まぁいいさ。2人とも思い過ごしだって分かったかい?」

 私はケイちゃんと顔を見合わせた。それでもケイちゃんはあまり納得していないような顔をしている。


「じゃパパはもう行くから。」

「え?何を言って…。」

「佳喜(よしき)は心愛の病気を看病しなきゃダメだからな。」

「な…ちょっと喜一さん!」

 パパは颯爽と去っていった。パパったら相変わらず…。

「…こんのくそじじいめ!って思ったでしょ?」

 私は苦笑ながらケイちゃんを見るとケイちゃんは困った顔で「あぁ」とだけ頷いた。
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