サトウ多めはあまあまデス
 ふと目を開けて目の前の光景に驚く。

 佳喜は後退ってベッドから落ちそうになった。

 どうして一緒に寝て…。

 まだクラクラする頭に熱が出たことは思い出した。

 どうにか心愛を隣のベッドに移動させる。華奢な体は思った以上に軽い。
 そして鼻をくすぐる髪が心臓に悪い。

「無防備過ぎるんだよ。お姫様は!」

 ったく…と文句を言いながら自分のベッドに戻った。

 寂しくなった腕の中。手を伸ばせば、すぐ届くところにある温もり。

 しかしそれは求めてはいけない温もり。

「どうして俺に預けるとか…。喜一さんも、愛子さんも…。大事なら鍵つけてしまっといてくれよ。」

 鍵をつけてしまっておきたいのは自分だという気持ちを見ないようにして目を閉じた。


 朝になると必要ないと言っても聞かない心愛と医師の判断で検査をするとインフルエンザだった。

 春になろうとしているこの季節。なんとも季節外れで場違いな病名。

「インフルエンザは薬の服用で異常行動を起こすことがあります。
 薬だけでなくインフルエンザに疾患するだけでも異常行動の報告もあります。
 くれぐれも一人にさせないように。」

 今はとにかく心愛から離れたいと思うのに、それを許されない状況を苦々しい思いで聞いた。

 医師の忠告など無視してしまいたいのに、つらい体はそれさえもできそうにない。

「昨日の行動はインフルエンザによる異常行動だったんだね。」

 そうにこやかに告げる心愛に、一緒に寝てたのは俺のせいだと言いたいのか…と心の中で文句を言った。
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