サトウ多めはあまあまデス
 従兄弟の家につくとおばさんの桜さんが出迎えてくれた。

「いらっしゃい。心愛ちゃん。
 こちらは佳喜くんでしょ?喜一さんから聞いてるわ。ささっ佳喜くんも遠慮しないであがって。」

 人懐っこい笑顔を向ける桜さんは年齢不詳の美魔女って言葉がふさわしい綺麗な人。

 でもパパのお兄さんと結婚して子どもも私より大きい社会人までいるから…と思うのにそれを感じさせない。

「瑠羽斗がいるの。心愛ちゃんが来るって言ったら楽しみにしちゃって。」

 う…。ルーくんいるんだ。大丈夫かな…。

 ケイちゃんをチラッと盗み見たけれど若干鋭い目つきに戻ってるかなってくらいで何も読み取れなかった。

「心愛!久しぶりだね。こっち来てよ。…こいつは?」

 あからさまに敵意むき出しのルーくんがケイちゃんを睨んでる。

「えっと佳喜くん。お兄ちゃんなの。」

「よろしく。」

 ケイちゃんは爽やかに挨拶してくれた。
良かった〜。

「お兄ちゃんって…。心愛は一人っ子だろ?」

「瑠羽斗。彼は喜一さんの秘蔵っ子なのよ。」

 秘蔵…。桜さん上手い表現。

「いいんです。桜さん。
俺、喜一さんの隠し子。」

 ケイちゃんは隠す素ぶりも見せずに普通のことのように話した。

 ケイちゃんの心臓の構造を覗いてみたい。

「ふ〜ん。喜一さんも結構やるね。
で、なんで心愛の隣がこいつなの?俺の隣に来てよ!」

「俺がお兄ちゃんだから。」

「そんなの理由になってない!」

 ルーくんは不機嫌そうに頬を膨らませると桜さんが苦笑しながら珈琲を運んでくれた。

「佳喜くんごめんなさいね。うちの子たち心愛ちゃんが大好きなのよ。」

 私も従兄弟の説明を加える。

「ルーくんの上にお兄ちゃんがいてね。翔(かける)に瑠羽斗(ルート)なの。おじさんが数学の先生をしててね。」

「あぁ。だからルート…。」

 珈琲にお砂糖は入れる?
 いえ俺はいいです。

 そんな会話が終わるとルーくんが角砂糖の入った小瓶を手元に引き寄せる。
 いつものことなんだけどさ。

 ドボドボドボっと入れた。
小瓶の方に珈琲を。

「ゲッ。まさかそれ飲むのか?」

 ケイちゃんが驚くのも無理ないよね。
 何個の角砂糖が入ってたんだろう。数えたくもないけど。

「なんだよ。いいだろ佐藤さんなんだから。」

 毎回聞く理由だけど不可解過ぎて理解できない…。

「あら。今日は本当に佐藤さんが多めね。」

 桜さんのおとぼけなところ好きですけど…。
 もう少し動じて欲しいかも。

「俺も佐藤だけど無いわ〜。」

 ケイちゃんはズケズケと言葉を吐き出す。

ルーくんへの視線の冷たさ増してないかな?

 ドキドキしているとルーくんもカチンときた顔をした。

「なんだよ。お前兄ちゃんなんだろ?兄ちゃんじゃ心愛と結婚できないんだぞ。俺は従兄弟だから結婚できるんだからな!」

 それも毎回言われるけどしませんよ。

 そう思っていると隣のケイちゃんに引き寄せられた。

「可愛いココをお前なんかにやるもんか。お兄ちゃんの方がずっと一緒にいられるんだぞ。」

 ギュッと抱きしめられると、これ見よがしに頬擦りをされチューされた。ほっぺにね。

 いや…。だからちょっと待って。外の方がスキンシップ…はぁ。以下同文。

「まぁ。喜一さんといるみたいね。」

 フフフッと桜さんは楽しそうに笑う。

 やっぱり私の周りの人ってズレてない?
笑えない。私は笑えないよ。

「なんだよ。心愛は俺の膝の上に座るんだぜ。」

「それ子どもの頃ね。」

 私はケイちゃんの腕の中のままルーくんの適当な文言を突き返す。

「一緒にお風呂入っ…。」

「それも子どもの頃ね。」

「結婚しようって約束…。」

「それは子どもの頃もしてない!」

 しょぼんとするルーくんが少し可哀想に思える。

 でもしてないものはしてない!

「せっかくだから食べましょう。心愛ちゃん達がケーキ買ってきてくれたのよ。ケイキくんにココアちゃんなんて本当に素敵な兄妹ね。」

「ふんっ。ケーキなんてこうだ。」

 ルーくんはブスッとフォークを刺して一口で食べてしまった。

 佳喜(ケイキ)を退治してやったと言わんばかりの顔で。

 はぁ。どうして私の周りの人たちはこんなに愛が重いんだろう。
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