サトウ多めはあまあまデス
「もう!そういうのは彼女さんにしてくださ…」

 全部言い終わる前に後ろから腕が回されると抱き寄せられて大智くんから距離が取られた。

 もちろん手も引っ張られ大智くんから離される。

そのままケイちゃんの腕の中に収まった。

「ココ。こいつは会話しただけで妊娠する恐れがある奴だから近づくの禁止。」

 う、うん。大智くんもそうかもしれないけどケイちゃんも近いものがあるんじゃないのかな?

 ほら。この腕は何よ。この腕は。

「なんだよ。話してただけだろ?」

 大智くんは不服そうなのに楽しそうに笑っている。

「ケイがそんなの本当珍しいと思ってたけど名前が一緒だからかぁ。」

「名前が一緒?」

「あぁ。ココのことか。」

 ケイちゃんも心当たりがあるような口ぶりで話す。

 ココ?
私じゃないココちゃんがいるのかな?

「ケイはさ。普段すっげー近寄りがたい鋭い目つきで人を寄せ付けないんだけどよ。ある人の前ではとろける笑顔なんだ。」

 ある人の前では…。

「ココちゃんって同じ名前だからだな。ココちゃんにケイがそんな甘ったるい顔を向けてるの。」

 大智くんの話は途中から全く頭に入ってこなかった。

 ココちゃんって人の前では、前だけでは心を許してるんだ。ケイちゃん。

「バーカ。そんなんじゃねーよ。妹だからだろ。」

「その…ココちゃんは?」

 ドキドキしながら質問すると大智くんはニヤニヤした顔をした。

「今日は来てないよ。気まぐれだからね。また今度来れば会えるかもね。」

「お前まだディナーの準備あるんだろ?」
とケイちゃんに言われた大智くんは
「はいはい。お兄様」
とふざけながらキッチンの方へ消えていった。

 目まぐるしくケイちゃんの知らなかった一面を見て何故だかショックだった。

 当たり前だよね。今まで別々に住んでたんだし。お兄ちゃんがいるって知ったのでさえ最近だし。

「悪かったな。その…考えなしに連れて来ちまって。」

 ケイちゃんは頬を指でポリポリとかいてそっぽを向いた。

 何かケイちゃんに言おうとした時にオーナーがキッチンから声をかけた。

「せっかくだ。おすすめをケイに作ってもらいな。ケイの料理は格別だよ。
 心愛ちゃんって名前だってな。見た目と同じように可愛い名前だ。」

 ワッハッハと笑ってキッチンにまた戻ってしまった。

「ったく。自分がサボりたいだけくせに。…悪いな。作ってくる。何か食べたい物あるか?」

 ううんと首を振るとケイちゃんに手を握られた。

「えっ…と。」

 ケイちゃんはこっちも見ずに「消毒」とだけ言ってキッチンへ行った。

 消毒…消毒…。
えっと…。大智くんの?

 不意打ちにココは顔が熱くなるのを感じた。

 えっ…と。えっ…と。どっちが危険人物かケイちゃんは分かってないよ。
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