サトウ多めはあまあまデス
 玄関を開け、中に入るとすぐに抱きしめられた。

「な…。ケイちゃん…。」

 戸惑う私の耳に外から恐ろしい光と音が聞こえた。

 ゴロゴロゴロ…。バリバリバリ!

「ひゃぁ!」

 思わずケイちゃんにしがみつくと頭の上からケイちゃんのため息混じりの声が降ってきた。

「バカココ。」

 馬鹿な心愛って意味ですよね。それ以外ないよね。

 そんな呑気なことを考える余裕もないほどに外ではゴロゴロバリバリ、ピカッと恐ろしい光景だ。

「ったく…。」

 ケイちゃんは私から腕を離して恐ろしい光景を見せる窓のカーテンを閉めに向かうみたい。

 でも…。

「や…。行っちゃヤダ。」

 カタカタと震える手でケイちゃんの服をつかむ。

 ケイちゃんは頭をポンポンとするとまた腕の中に私を収めた。
 さっきよりも大きくなるバリバリバリって音に足もガクガクと震え始めてケイちゃんにつかまってないと立ってられない。

 ケイちゃんは諦めたのか玄関に腰を下ろした。
 抱きしめられたままの私は「ひゃぁ」と小さい悲鳴をあげてケイちゃんのあぐらの上に乗せられた。

 そんな私をケイちゃんはもう一度抱きしめ直す。そして耳元でささやかれた。

「大丈夫だ。大丈夫だから。」

 その優しい声色に体をケイちゃんの胸に預けコクンコクンと何度も頷いた。

 心地いいトクトクというケイちゃんの心音と「大丈夫」と言い続けてくれるケイちゃんの優しい声の遥か彼方でゴロゴロと聞こえているような気がした。
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