サトウ多めはあまあまデス
「拓真がこんなに最低だなんて思わなかった。」

 残された拓真と二人、優奈は相変わらずのほんわか口調で、けれども反論できない凛とした声で拓真を一蹴した。

 拓真は何も言わない。

「心愛ちゃんが雨と雷は亡くなったお母さんを思い出して辛いってこと知らないの?」

 それは…。

 小さくつぶやいて申し訳なさそうに顔を下に向ける。

「心愛ちゃんのこと拓真も心配なのは分かるけど、見守るしかないんじゃないかな?」

「…それが……許されない恋でも?」

「そう。もしそうなっても一番つらいのは心愛ちゃんだもの。」

 拓真は思い出していた。

 自分には向けたことのない照れたような恥ずかしそうにはにかんで手を引かれた心愛の顔を。
 それが兄であろうと自分は敵わないのを思い知っていた。

 優奈だって心愛には幸せになって欲しい。大切な親友。辛い恋なんてして欲しくない。

 でも昨日の顔を見ちゃったら…。

 いつか大泣きすることになっても一緒に泣くのに付き合うことしかきっと出来ないんだと思っていた。
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