サトウ多めはあまあまデス
 降りてきたケイちゃんは何か持っていた。

 えっと…糸電話?

「ほら。試してみたら?」

 あの…やっぱり馬鹿にしてます?

 手渡された糸電話の糸は確かにものすごく長そうだけど、まさかそれが天国に届くなんてさすがの私でも思えない。

「何、ボヤッとしてるんだよ。俺が届けてやるから。」

 悪戯っぽく笑ったケイちゃんにドキッとしていると片方の紙コップ(先に糸付き)が手渡され、もう片方をケイちゃんが持って2階に上がって行ってしまった。

 からかわれてるのかな…。

 そう思いながらも、もしかして…と思って紙コップを口に当てた。

 まっすぐ2階まで伸びる糸。
 その先は階段の陰になっていて見えない。

 ピンッと糸が張ってその糸が動かなくなったことを確認してから呼びかけてみた。

「ママ?心愛です。」

 ドキドキしつつ耳にコップを当てた。

「…どうしたの?心愛ちゃん。」

 ギュッと心臓が鷲掴みされたかと思うくらい柔らかくて優しい声がちゃんと聞こえた。

 それは…

 少しだけ高い声の紛れもなくケイちゃんの声。

 やっぱりからかわれてる?

 それでも優しい声色にどうしようか迷っているとまた声が聞こえた。

「心愛ちゃん?何か相談事があるんでしょう?」

 心愛ちゃんって…。ママの真似してくれてるんだね。

 からかわれてるっていうよりも…やっぱりこれはケイちゃんの優しさなんだろうな。

 そう思って、ママと思い込むことにして私は相談することにした。
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