サトウ多めはあまあまデス
 部屋に入った佳喜はベッドに倒れこむ。

「これでいいんだろ?…喜一さん。…愛子さん。」

 まぶたをきつく閉め、しばらくするとベッドから起き出す。

 そして机に向かった。

 ペンを手に取り真剣な面持ちで便箋に言葉を綴る。

『しんあいなる ここあへ』

 綺麗で丁寧な文字は花びらの柄がプリントされた可愛らしい便箋の上に言葉を重ねていった。

 時折、手元にある日記の様な物を確認しながら、言葉を慎重に選ぶ。

 優しい顔で…だけど僅かに辛い顔で書き上げた便箋をお揃いの封筒に入れて切手を貼った。

それを肩掛けのバッグに入れて部屋を出る。

 玄関に向かっていると心愛がお風呂から出たところだった。

「ケイちゃんどこに行くの?…まさか女のところ?」

「コンビニだけど?」

 本当に〜?と言いたそうなのが顔全体に出ている。

 両親の愛情を一身に受け素直に育った天真爛漫。それが佳喜が心愛に感じた印象。

 その純粋無垢な顔を見ると歪めたくなる。

「女物のシャンプーの香りをさせて帰った方が良かったらそうするけど?」

 わざと意味深に笑うと玄関を出た。

 後ろで聞こえてないと思っているらしい「うげっ。遊び人ー!」という声が丸聞こえだった。

 少し遠いポストまで歩く。

 背がスラッと高い佳喜は目立つのが嫌でつい背中を丸めそうになる。

 しかし「シャキッとしなさいよ」の声を思い出すと微笑んで背筋を伸ばした。

 その方があの人を近くに感じられる気がした。

 夜の風が心地よく頬に当たる。
ポストの前に立つとバッグから封筒を取り出した。

 封筒に書かれた宛先はさっき出てきた家。宛名は『さとうここあ』差出人は『さとうあいこ』それらをチラッと確認した後にポストに封筒を押し込んだ。

 ふぅと一息つくとコンビニに足を向けた。
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