恋の神様におまかせ♪
こういう恋愛絡みの話は、稲穂の専門だ。
誰かに愚痴を聞いてほしかったから、ここに、稲穂のところに来ちゃったんだろうな。
鳥居を潜って、本堂の裏に、稲穂の家がある。
インターホンを鳴らすと、稲穂ママがでた。
「お久しぶりです、由紀です」
《由紀ちゃん?待ってね、今開けるから》
プツッ、という音のすぐに、玄関からパタパタと足音が近づいてきて、扉が開いた。
「いらっしゃい、久しぶりね由紀ちゃん」
「稲穂、いる?」
「あー、ごめんね。今仕事に行ってるの」
仕事、とは、縁結びの神様としての仕事のこと。
稲穂は中1の時から、夏休みとか冬休みとかの長期休みの間は、稲穂ママのやってる神社に来る人たちの恋の願いを叶える仕事を代わりにやってるみたい。
そっか……いないのか。
「稲穂の部屋にいたら?もうすぐ帰ってくると思うから」
「じゃあ……そうしようかな」
稲穂ママのお言葉に甘えて、部屋に上がって待つことにした。