恋の神様におまかせ♪



「へぇー……この子が」


にやっと笑って、私に見せつけるみたいに隼人にくっつくその女に、気付けば殴りかかっていた。


鞄が彼女の頭に当たりそうになる。

でも私の手を、隼人に捕まれて殴ることはできなかった。


「……なんで、」


「待てって!話聞けよ!」


なんで庇うの!?

女の前に立ちはだかる隼人に、怒りが込み上げる。


捕まれた腕を乱暴に振り払う。


「隼人のバカ!大っ嫌い!!」


「由紀!」


背を向けて走り出そうとする私の肩を掴む手を、爪で引っ掻く。

昨日の夜塗ったところのネイルが剥げちゃったけど、気にならないくらい腹が立っていた。


「触んないでよ!もうっ!あんたなんかとは別れる!!」


そう叫んだ瞬間、涙が零れ落ちた。

視界がぼやけて、隼人の顔が見えなくなった。


後ろで私の名前を叫ぶ声を無視して、家までがむしゃらに走った。






< 144 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop