恋の神様におまかせ♪



「ど、どうした!?」


まどかが俺に手を伸ばすから、その手を握って返事をする。


まどかは痛みで上手く話せないのか、口をパクパクと動かすだけで、声が出ていない。

読唇術なんて心得てない俺は、もどかしくて眉をひそめた。


まどかの瞳から涙がこぼれ落ちた。



「…そうたっ……わた、し………」


「んっ?」


「……わたし………わす、…れ……い、っで……!」


“忘れないで”?



「なに、いって……。もうすぐ救急車くるから!もう少しだけ頑張ってくれよ!」


いつのまにか涙が流れていた。


こんなに苦しそうなのに、俺はなにもしてやれない。


なんて、無力なんだ。



「…そうた……」



握ったまどかの冷たい指に、少しだけ力が入った。

俺も答えるように、手に力を込めた。


「……わ…、たし………しあ、…せ………に…………………」


“私”、“幸せに”?


「幸せに、なりたい?」


そう聞くと、ふるふると首を振った。

違う?じゃあどういう……。


まどかの言葉の真意を知りたくて、口を開く、と。




まどかは目を閉じて、体から力が抜けてしまった。













< 255 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop