恋の神様におまかせ♪



”お前が親に話し付けに行ってやったら?”





それが潤平の出した答えだった。





ちょっと前に稲穂の家が玖々璃神社だって事は聞いていたから、土曜日の今日、バイト探しだと嘘をついて、ここにやって来た。



……が、なかなか鳥居の中に踏み入る勇気が出ない。


まだ高校生の娘を勘当してしまうような親だから、きっと物凄く厳格で、恐ろしい人なんだろうな……。

家に2ヶ月預かってたなんて言ったらどんな目に遭うんだろう……。


「……どうしたもんか……」


鳥居と、それを囲む生い茂った木々を見つめて立ち尽くしていると、


「どうかされましたか?」


後ろから優しい声がした。

振り返ると、そこには小柄で柔和な笑みを湛えた男性が立っていた。

よく見ると、顔の雰囲気が何処となく稲穂に似ている。

もいかして、


「稲穂のお父さん……?」


ひとり言のようにそう言うと、その男性は目を見開いた。


「いっ、稲穂を知っているんですか!?」


さっきとは打って変わって必死なその形相に、確信した。


この人は、稲穂のお父さんだ。








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