教えて、うたくんのこと。
「欠席は、宇津木吟(うつき うた)の一人だな」
クールな口調でノートに出欠の記録をつけるのは、長い黒髪の、とびきり美人な皆瀬(みなせ)先生だ。
毎度のことながら、皆瀬先生が教室にやってくるや否や、男子生徒の視線は釘付けで。
その様子を、
恨めしそうに女子生徒が眺めている……。
「うたのやつ、タイミング悪すぎじゃね。なにも今、腹痛くならなくても」
隣の席の男子――原くんが、ケラケラと笑いながらそんなことを言っているのが聞こえてくる。
「……わざとだったりして」
ぽつりとつぶやく。
「あ? 柏木(かしわぎ)、なんつった?」
わたしの独り言を聞き逃さなかった原くん。
「……な、なんでもない」
「なんだよ。気になるだろ――」「はい、私語はつつしんでー。前回の続きからやるよ。テキスト開いて」
皆瀬先生の一言で、原くんは前を向いた。
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