教えて、うたくんのこと。
門に左足をかける。
そして、次に右足を――んん、だめだ。
かけたはいいが、とても乗り越えられる気がしない。
うたくんの長い足なら余裕だろうけど。
わたしには無理だ。
……ミッション失敗。
うたくんは、ずっと向こうまで歩いて行っちゃっただろうか。
勢いよくのぼったはいいが、おりるのがちょっと怖い。
そーっと
そーっと……
「こら。そこで、なにをしている」
――!!
や、やばい。先生に見つかった……!?
「すみませ……わっ!?」
「おい……」
「あああああ!!」
ドスン。なにかの上に倒れ込んだ。
コンクリートでは、ない。
……痛くない。
(え?……ええええぇ!?)
「宇津木くんっ……!?」
「バカかお前」
うたくんに、怒られた。
「どけよ」
「ごめんなさい!!!」
うたくんを……
下敷きに、してしまった。
私はうたくんのこと、名字で呼んでいる。
それほど親しくはないからだ。
でも、
クラスの他の子はうたくんのことを名前で呼ぶ。
だから、心の中では、ひそかにわたしも〝うたくん〟って呼んでいたりする。