教えて、うたくんのこと。
わたしが立ち上がると、うたくんも立ち上がって、制服についたヨゴレをはらう。
「打ちどころ悪かったら人生終わってたぞこれ」
「……宇津木くん。ここ、まだ汚れてるよ」学ランの脇腹あたりをはたく。
「そんなことより。柏木、なんで俺のあとつけてた」
「へっ?」
「とぼけんなよ。柏木があとつけてくるから、逃げちまったじゃねーか。意味もなく」
そうなの?
うたくん、わたしから逃げてたの!?
「それでうたくんは、体育館の方に……あ、」
うたくんって呼んじゃった。
「そうだよ。追い払ってやろうと思って。お前が俺のこと見失うの確認できたし立ち去ろとしたんだけど、なんか降りれなくて困ってるみたいだったから」
そうなんだ……!
わたしのこと、心配して声かけてくれたんだ。
うたくん、優しい。
「ちょっとビビらせてやろうと思ったら」
(……ん?)
「まさか降ってくるとはなあ」
「っ、それは。先生に見つかったと思って焦って足を滑らせちゃったから!」
「人のせいにすんなよ」
「で、でも……」
「どのみち俺がいなきゃケガしてたかもよ」
それは、うたくんの言うとおりだ。
「でも、まさか柏木が校門によじ登るとはな。ウケる」
そこ、笑わないでくれますか。
そりゃあ、私みたいな地味子が校門乗り越えるなんて絵図シュールだろうけどさ。
……ところでさっき、名前呼びしちゃった件は。
なんにもツッコまれなかった。
呼んでいいのかな?
わたしも……みんなみたいに
うたくんのこと、うたくんって。